解禁されても内緒でやるべき理由は?

目安時間:約 10分

世の中は副業解禁の流れにあります。それなのに、副業はオープンでなく、内緒にすべきなのでしょうか?
答えは「Yes、Yes、Yes !」
シークレット副業を勧める理由を、私の痛々しい経験も交えて、考察してみます。

 

《当初は堂々とやっていたものの》

自己紹介記事でも書いたように、サラリーマンとして副業を始めた当初は、隠そうという意識はありませんでした。自分の知名度を上げてお客を集めようと、実名&顔出しでおおっぴらにやっていました。そのほうが信用されるだろうと、マーケティングの実践書に沿った形でやっていたわけです。
とはいえ、勤め先の人達を勧誘したり、職場で別の仕事をしていたわけではありません。公私の分別はわきまえています。しかし、

「今日は帰るの早いね、どうしたの?」

「これから別の仕事があるので、残業なしで失礼します」

「へえ、副業かい。何してるの?」

と、これくらいの会話はしていました。

 

《失って、初めて気づいた関係性》

副業を隠すつもりもありませんが、勤め先の人に聞かれてわざわざ説明するのも面倒なのものです。丁寧に説明すればするほど、互いに距離を感じてしまうといいますか。そうすると、説明が言い訳がましくなってしまい、自分で罪の意識すら感じてしまうようになる。精神的にも良くないです。
当時は私も若かったので、「会社の人達はみな同じ目標に向かってがんばるべきだ」という虚構を信じていました。実際はそんなことはありません。会社で働く事情は人それぞれです。自己実現のため、給料のため、キャリアアップのため、あるいは単なる惰性、などなど。それでも一応は、愛社精神やタテの関係を演じておかないといけないわけで。
その中で「副業やってます」宣言をすると、周囲との関係性が必要以上に変化してしまう。自分を正当化するような説明をするうち、社内では「意識たかい人」というポジションになる。自分でもそうあらねばという意識になり、ますます変化は加速していきます。
その結果として起業、退職にまで行き着きました。別に後悔はしていませんが、周囲に虚勢を張る苦しさを味わう必要はなかったかと思います。私は鈍感なほうですが、周囲に気を遣う人だともっと大変でしょう。

 

《痛い変遷を経て現在》

起業〜退職してぐるっと回って、またサラリーマンに戻った今、副業はもちろんシークレットです。勤め先の関係者はもちろん、友人・知人にも言っていません。
以前と比べて精神的に楽なばかりか、逆に大きな安心感を得られています。
→自己紹介へ

 

【内緒にして良かったこと】

《周りとのコミュニケーションが楽》

まず、上司や同僚の立場で考えてみましょう。人は、自分と共通点を持つ人に親近感を覚えるものです。同じスーツ姿、社内用語を使うことで生まれる仲間意識。ラポールが築かれ、コミュニケーションが取りやすくなります。
そこに「副業やってます」の人が出現するとどうなるか。余計な情報を与えることで、「この人なんか違う」で、互いに居心地が悪くなり、関係が気まずくなります。仕事の能率が下がったり、コミュニケーション不足からトラブルを起こしかねません。
職場でよく聞く「会社は給料上げてくれないなあ」「変わらなくて嫌になっちゃうよ」とか言うグチにも、適当に相づちをうっておけば、それで皆ハッピーなのです。ほとんどの人にとっては「変わらないこと」=「安定感」が彼らの幸せなのですから。周囲の人達に副業を勧める必要は全くないし、副収入に対して嫉妬されます。
ちなみに脱線しますが、日本の国民的なアニメとして頭に浮かぶ「サザエさん」「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」。どれもお父さんがサラリーマンの設定です。しかし「ちびまる子ちゃん」の父ヒロシの職業は謎とされています。まるこちゃんのモデルである作者、さくらももこさんの父は実は八百屋。しかし、マンガの登場人物は自営業でなくサラリーマンにしたかったそうです。でもわからないから仕事のことを描写しなかったという事情があるらしい。
たいがいの日本人は子供の頃からこういうアニメを見て育っています。知らず知らずのうちに自分の人生の設計図まで書き換えられてしまうので注意したいものです。

 

《勤め先との関係が悪化しない》

いま、日本の会社の態度は様々で、「副業黙認」「副業解禁」「副業歓迎」いろいろあると思います。しかし、従業員の立場で、勤め先企業の社風を積極的に変えようなどと思う必要はありません。それは経営者や人事部門の仕事です。
しかし普通の会社には、社員の副業を積極的に扱うなんて無理でしょう。「昇給できないから副業で稼げ」程度の位置づけです。
私自身が痛感していますが、収入を増やすなら、勤め先で給与を上げる努力をするより、残業やめて副業に時間を使ったほうがはるかに楽で簡単です。月5万円程度の副収入なら、半年ほどで実現できます。こういうことが社員にバレて、みな副業を当たり前にするようになったときに、日本企業の生産性も上がっていくのかなあと思います。
話がそれましたが、就業規則や表向きの建前はどうあれ、会社にとって、「副業してます」と主張さえしなければ、会社にとっては無害。問題が存在しないのも同じです。
→就業規則違反では?の記事へ
無駄に波風を立てる必要はありません。事なかれ主義、バンザイ。勤め先企業内の私と、副業をやっている私は、別人格でよいのです。

 

《言いがかり被害を避けられる》

「副業してます」とオープンにしている状態で、本業の勤め先で失敗をやらかしたとします。
すると、

「別のこと考えてたからだろ」(取引先とのトラブルのことを考えてるのに)

「夜中まで副業やってボーっとしたからだろ」(子育てや親の介護だったら、同情されるのに)

その失敗が副業と関係なかったとしても、副業のせいにされてしまいます。「介護や子育て=良いこと」「副業=悪いこと」の無意識の価値観が、バイアスになってしまうようです。

 

《経歴のリセットがしやすい》

この点は、脱サラしてまたサラリーマンに戻った私が痛感していることです。
一生を会社員として過ごすわけではありません。人生は二毛作、三毛作。将来もどうなるかは予想できません。
しかし、インターネットで実名をさらして活動したなら、記録は自分が死んだ後まで残ります。自分がアピールしたい経歴を、自分でコントロールできなくなるのです。よほどの覚悟をもってすべきです。

 

《副業の邪魔をされない》

勤め先の上司も同僚も、みなサラリーマンです。人は、自分と異なる価値観の人に対し、否定的なアドバイスをしてしまいがちです。
彼らの言葉は
「インターネットの仕事なんて虚業だろ」
「そんな簡単に儲からないから、やめとけ」
みな親切心から出る、ありがたいお言葉なのですが、大きなお世話です。いちいち対応していると、自分のモチベーションが下がります。
ですから副業に関する話は、出す必要もないし、出すとデメリットだけ。コーチング系の理論でいう、ドリームキラー対策「自分の夢は人に言うな」です。

 

《自分の心に余裕ができる》

いろんな選択肢があることは、余裕と幸せにつながります。
それをあえて相手に言わないことで、相手に対する優越心を持って接することができます。心の余裕に繋がります。
「君たちとはレベル違うのだよ」
「この人はわかっていないのだな」
こんな台詞を実際に口に出したら、高慢な人みたいですね。でも、もし職場で理不尽に怒ってる人がいたとしても、自分の心の中でこうつぶやけばいいのです。子供に接するように、高い視点から、広い心で対応する余裕が生まれるものです。

 

【でも、内緒だと、ここがつらい】

《話し相手ができない》

副業は内緒と言いつつ、「誰かの共感を得たい」という欲求は私にもあります。同じような状況の人と話すと嬉しくなりますし、前向きの刺激を受けます。何かしら課題に立ち向かうときには、ライバルや仲間がいたほうが、励みになることも事実です。
同業の集まりやセミナーに参加できればよいのですが、今は海外在住なので、なかなか難しくなりました。そこで副業仲間がほしいというのが、このサイトを立ち上げた理由でもあります。

 

《副業の分野が限られる》

シークレットを前提とすると、どうしても活動に制約ができます。これについては、仕方ないですね。勤め先に内緒にするメリットの方が大きいです。

 

【終わりに】

多くの場合、副業が知れることは、悲劇の始まりとなります。バレて良いことは何もないうえ、後戻りもできません。
副業を内緒で、というのは、会社の体質が変わるかというレベルの問題ではないです。経営がいくら旗を振ったところで、管理者たちや一般社員までの考え方は一朝一夕には変わりませんから。もっと根深い「同質性を尊び、異質を排除する」日本の社会が変わるまで、サラリーマンの副業はシークレットが得策と思うのです。
いつか、「多様性を尊び、事なかれ主義を排除する」社会になれば、変わるかもしれません。でも、私はいまの日本社会も好きです。だから、皆が幸せになれるシークレット副業にいそしむのです。


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