アフィリエイト業界の実情

目安時間:約 15分

副業に興味のある方なら、既にどこかでアフィリエイトについて見聞きしたことはあるでしょう。書籍やネットでも、多くの関連情報が出ていて、すでに多くの人がアフィリエイトを行っています。

そんな中で、「今さらアフィリエイトを始めても、もう遅いんじゃ……」と思っている人も多いのでは。

しかし、アフィリエイトに関する最新のデータを調べてみると、まだまだ大きな可能性があることがわかります。

この記事では、アフィリエイト業界の状況や展望について、客観的な資料をもとに分析してみます。アフィリエイト市場の成長率データを見れば、これが一過性のビジネスモデルではないことがわかるでしょう。これから新規参入しようという方が、安心してじっくりとアフィリエイトに取り組んでもらうための参考になればと思います。

以下では、業界を把握する際の手法であるPEST分析を使って見ていきます。

PEST分析は、経営戦略の検討にあたり、マクロ環境を分析するために用いられる手法の一つです。
以下の4つの切り口から、外部環境を見ていきます。

  • P: Political(政治的な動き、保護や規制はどうなっているか)
  • E: Economic(経済的な動き、業界の規模はどうか)
  • S: Social(社会、人々の動きはどうか)
  • T: Technological(技術面の変化はどうか)

【Political分析(政治面)】

今のところ、アフィリエイトを保護したり直接規制したりする法令はありません。

しかし、アフィリエイトも広告なので、その表現については景品表示法や医機法(旧薬事法)の適用対象となります。また、取り扱う商材によっては、保険業法(保険代理店)や健康増進法(健康食品など)が適用されます。

これらの法令でどんな規制があるかと言えば、嘘や誇大表現はダメ、という当たり前のレベルの規制です。誠実にサイト運営をしていれば心配することはありません。

なので、法規制は気にせず、ガンガンやりましょう!と言いたいところですが、扱う商材、参入ジャンルについては注意が必要です。
というのは…

《アフィリエイト規制の動き》

2016年、根拠のない情報を繰り返し発信していた医療情報系サイトが問題となり、最後はサイトが閉鎖される事件がありました。その後しばらくして、健康美容系サイトの多くがGoogleの検索結果から消されるという、アフィリエイト業界を震撼させる事態となりました。

これは法規制ではなく、Googleによる自主規制の影響です。Googleの検索アルゴリズムが大きく変わったおかげで、多くのサイトが吹っ飛びました。この事態をGoogleの「健康アップデート」といいます。私のアフィリエイト収入も少なからず減少し、かなりショックを受けました。

また、アフィリエイト手法に関連して、迷惑メール防止法(メルマガを使って情報発信する場合)、特定商取引法(自分で販売する場合)などが適用対象となります。

総じて言うと、アフィリエイトへの規制は強化される方向にありますし、今後もそうなるでしょう。しかしこれは、「売れれば何でもアリ」の無法地帯が、健全化していくということです。そうすれば、消費者も安心して利用できるようになり、業界規模が大きくなっていくのですから、歓迎すべきことです。

【Economic(経済面)】

では、気になる経済面のお話。アフィリエイトを巡ってどれだけのお金が動いているのか、という話です。

《現在の業界規模は?》

まず、大所高所から見ていきましょう。

大手広告代理店・電通の『2017年日本の広告費』によると、2017年の日本の総広告費は、6兆3,907億円(前年比101.6%)、6年連続でプラス成長です。そのうち、インターネット広告費は、1兆5,094億円(前年比115.2%)、こちらは4年連続で2桁成長と相変わらずの勢い。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったメディア4媒体の広告費が前年比97.7%と落ち込む中、インターネット広告費は増加を続け、今や日本の広告の1/4を占めています。

インターネット広告費の中でも、アフィリエイト広告費は2,275億8,700万円(前年比113.5%)でした(矢野経済研究所『2018 アフィリエイト市場の動向と展望』より)。インターネット広告費のうち、およそ15%をアフィリエイト広告が占めています。

このアフィリエイト広告費の調査をまとめた矢野経済研究所(以下、矢野経)は、ニッチ業界レポートを得意としています。ちなみに、私も本業で、この矢野経の取材を受けたことがあったりします。矢野経は、アフィリエイト市場に関しても、国内の主要なASPサービス提供事業者への面接取材を行い、毎年定点観測レポートを作成していますので、信頼性は高いと思います。

矢野経の予測では、2021年度のアフィリエイト市場規模は4,058億円まで拡大するとのこと。4年間で178%の成長率(4,058/2,275=1.78)ですから、年あたり成長率は平均で15.6%ですね(1.156^4=1.785)。この先もアフィリエイト業界は堅調に拡大しそうです。

《ASPの業況は?》

ASPのうち、上場している数社の有価証券報告書を見てみます。上場会社は、経営成績を『有価証券報告書』という様式で公開する義務があるのです。

〈インタースペース〉

アクセストレードを運営するインタースペースの有価証券報告書によると、
2017年のアフィリエイト分野の売上高は273億円(前期比100.8%)です。

説明を読むと、「プラットフォーマーによる検索アルゴリズムの変更、広告表現の規制等の影響を受けましたが(中略)仮想通貨、健康食品および人材の各ジャンルで広告需要を開拓しました」とのこと。これはつまり、Political分析で見たように、Googleの健康アップデートや表現規制の影響が出たけれど、広告主企業のほうはまだまだ広告を出したがっているので、業界規模は堅調に伸びましたよ、ということですね。

〈ファンコミュニケーションズ〉

A8.netを運営するファンコミュニケーションズの有価証券報告書によると、
2017年のアフィリエイト分野の売上高は257億円(前期比105.1%)です。

詳細内訳を見ると、広告主の数が3,446件(前期比106.0%)、アフィリエイトサイトの数が2,366,269件(前期比109.3%)と堅調に伸びています。

〈アドウェイズ〉

JANetを運営するアドウェイズの有価証券報告書によると、
2017年4月から2018年3月のアフィリエイト分野の売上高は171億円(前期比94%)です。

「一部の広告主(クライアント)の出稿予算額縮小や運用メニューの表記是正によるプロモーション獲得数の一時的な減少により」売上高が減少したとのことです。

アフィリエイトも企業広告の一部なので、広告主の業績が悪くなれば広告費も減ってしまうというリスクはあります。アフィリエイターとしてもどの広告を掲載するか、リスク分散はしておくべきですね。

〈バリューコマース〉

バリューコマースの有価証券報告書によると、
2017年のアフィリエイト分野の売上高は154億円(前期比91.3%)です。

「金融分野のうち利益率の低い大型案件の広告出稿が減少」が減収理由とのことですが、アフィリエイト分野の利益は逆に増えて、前期比23.9%増となっています。アフィリエイターとASPの取り分は利益相反の関係にありますから、ASPの利益率増というのはあまり歓迎できない話かもしれません。

《アフィリエイターの状況は?》

これからアフィリエイトをやってみようという方、始めて間もない方にとっては、本当に儲かるのかが一番気になるところでしょう。

アフィリエイトマーケティング協会の資料『アフィリエイト・プログラムに関する意識調査 2018』から、アフィリエイター向けアンケート調査の結果を少し引用します。

〈アフィリエイトを始めてからの年数〉

1年未満が37.4%、次いで1年以上~2年未満」が続いた。1年未満でやめてしまうアフィリエイターが多いことが伺える。

〈ひと月のアフィリエイト収入〉

「収入なし」が 23.3%と突出しており、「1000 円未満」が14.5%という結果となった。一方で月100 万円を超える割合が、全回答者の9.9%超となった。

〈アフィリエイト収入×アフィリエイトを開始してからの年数〉

50万円以上の収入があると回答した人のうち、アフィリエイトを始めてから5年以上経過していると回答した人の割合が45%を超えている。

〈管理人岡本の見解〉

これらの調査結果から言えることは、

  • とりあえずアフィリエイトを初めてみる人は多いが、儲からないのでどんどん脱落している。
  • 月50万円の収入を目指すなら、5年以上継続する覚悟をすべき。

という感じでしょうか。

「簡単に儲かる話があるなら、皆がやってるのでは?」という質問に対しては、「皆が始めるけど、儲かる前に皆がやめてしまう」というのが答えですね。

【Social(社会・文化・ライフスタイル面)】

《PCからスマホへの動き》

ここでも矢野経の上記資料から引用します。

「近年、スマートフォンの台頭により、ブラウザベースのオンラインショッピングやゲーム利用が中心だったEC市場が、スマートフォンのブラウザやネイティブアプリをベースとしたオンラインショッピングやゲーム利用にシフトしつつあります。その中で、アフィリエイトをはじめとした成果報酬型のインターネット広告のマーケットに関しても、大きく変化が起きており、EC市場の拡大を背景に市場も堅調に推移しており、特にスマートフォン経由の売上が拡大しています。」

とあります。

私のアフィリエイトの成果レポートを見ていても、ここ数年でスマートフォンからの売上がかなり増えて、今ではPCと同じ程度になっています。私としても、サイトをレスポンシブ対応に変えたり、デザインや表現も手直しした、という理由もありますけどね。

このように、日本の消費者が、いつでもどこでも、気軽にインターネット通販でモノやサービスを手に入れるようになったということも、アフィリエイターにとっては追い風です。

《消費者行動の変化》

もう一つ、消費者行動の変化も指摘しておきましょう。

「AISAS」(アイサス)って、ご存じでしょうか? かの電通が、インターネット時代の消費者の行動モデルとして提唱したもので、次の用語の頭文字を並べたものです。

  • A:Attention(認知・注意)
  • I:Interest(興味)
  • S:Search(検索)
  • A:Action(購買)
  • S:Share(情報共有)

具体的には、

  • 「Attention」
    まず消費者が商品やサービスをインターネットやソーシャルメディア、店頭などで認知します。
  • 「Interest」「Search」
    次に、認知した商品に興味・関心を持ったところで、インターネットを使って情報収集します。口コミサイトやブログ、さらにはソーシャルメディアなどです。
  • 「Action」「Share」
    購入(Action)の後、自分の買った服やサービスをFacebookやInstagramに投稿したりしてシェアするわけですね。

このように、何かあればインターネット上で情報収集するのが習慣になっている時代、アフィリエイトの広告効果はますます高まっていることは言うまでもありません。

世の中の全ての商品がアフィリエイト向きというわけではないにせよ、企業によるアフィリエイト広告の利用は今後も拡大するでしょう。アフィリエイターにとっても、扱える商材の多様化が進むことは、もちろん大歓迎です。

【T=Technological(技術面)】

最後に技術面からアフィリエイト業界を見てみましょう。

アフィリエイトは、そもそもがインターネット広告の一分野ですから、インターネット技術の上に成り立っている業態と言えます。

インターネットが今後なくなるとは考えられませんが、絶え間なく進化を続けることでしょう。インターネットの歴史を振り返ってみても、Webサイトや電子メールに加えて、YouTubeやSNSが使われるなど、集客や情報伝達の手段が増えてきました。アドセンス広告など、新たなアフィリエイトの形態も生まれてきました。

それから、ブラウザや決済手段の進化、Googleの検索アルゴリズムの変化に伴い、アフィリエイターも新技術に対応してサイト改修などを続けていかなければなりません。何も対応しなければ、すぐにではないにせよ、収入はだんだんと落ち込んでいきます。

とは言っても、週や月単位で刻一刻と変化していくわけではありません。そんなスピードの進化には、大多数の消費者がついていけませんから。

我々アフィリエイター側としても、焦らずにじっくり対応していけばよいレベルです。サラリーマンの副業でも問題になることはないです。

【まとめ】

以上をまとめると、アフィリエイト業界の状況は…

  • インターネット技術の進化を背景に、業界規模は拡大しており、今後も緩やかに拡大が続く
  • 健全化の方向で法規制、自主規制の動きがあり、アフィリエイター側にも正確で価値ある情報発信が求められている
  • アフィリエイトを始める人は多いが、成功する前に脱落する人が大多数なので、農業のように、長く続けたモノ勝ちの業界と言える

インターネット技術の進化に対応し続ける必要がありますが、その都度ツールも出てくるので心配はいりません。

アフィリエイトは副業としてこの先10年は続けられるビジネスです。私自身も勉強しながら楽しんでいこうと思っています。


カテゴリ:エッセイ  [コメント:0]

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